美容小説「Language of flowers」4
Language of flowers
『肌がきれいだったら、人生は変わっていただろうか?』
美容皮膚科に出会うことで、変わっていく紗菜の物語。
episode4.「雨がくれた出会い」
ーわたしよりだいぶ年下な気がする。
カフェを出て、なんとなく桜ヶ丘の方へ歩いていたら代官山まで来ていた。
日が沈みかけ、気温がぐっと下がっている。半袖だとかなり肌寒いくらい。
ーあ、雨。
これから結構降りそうな予感しそうな、大粒な雨が顔にあたる。しばらく速足で歩いたが、
さすがに服も髪も濡れてきて、体力も体温も奪っていく。
どこかで雨宿りしたいと思った瞬間、後ろから人の気配がした。
「傘ないんですか?よかったら、中入ります?」
身長182~3cmはありそうな、背の高い男性が声をかけてきた。
急に声をかけられて驚いていると、
「びっくりしないでください。ただの花屋の店員ですから。」
と言って、口角を上げて微笑んでくれた。その笑顔だけで今は癒されてしまう。
「・・冷淡、移り気。」
「え?」
「急にごめんなさい、紫陽花の花言葉です。そのスカートの柄、
紫陽花ですよね。きれいだなぁと思って。」
「アジサイってそんなネガティブな花言葉だったんですね。なんだか意外。」
「紫陽花はポジティブな花言葉もあるんですよ。辛抱強い愛情とか。」
「辛抱強い愛情か・・・。」
愛に辛抱強さなんているんだろうか。ふと佑樹のことを思い出した。
確かに、仕事で忙しいから会えないとか、待ち合わせ時間に遅れてきたり、
そういうのを我慢してきたのは、わたしの方だった。
「ここ僕がやってる花屋なんですけど、夜はワインバーになるんですよ。
今日は少し肌寒いからホットワイン作っていたところなんです。自分で飲む用にね。」
年はわたしよりだいぶ年下な気がする。
白い肌がきれいで、清潔感のある白いシャツに紺のエプロンがとても似合っていて
思わず見とれてしまうほどだ。
小さい黒板のボードには、「Wine bar J 19:00 OPEN」とある。
腕時計に目をやると、18時になったばかりだ。
「まだ開店準備中なんですね。」
「そうなんです。だからこのホットワインしかお出しできませんが、お代はいただかないので。」
「えっと・・じゃあ、お言葉に甘えて一杯だけ。」
「ご挨拶がまだでしたね。僕、ここのオーナーのジュンです。
ほんとうはジュンテって名前なんですけど、ジュンって呼んでください。」
ーだからか。
肌のきれいさと白さの理由を、名前で納得した。
そして、母親が一時期ハマっていた韓国ドラマの主人公の俳優を思い出していた。
to be continued…