美容小説「Language of flowers」7
Language of flowers
『肌がきれいだったら、人生は変わっていただろうか?』
美容皮膚科に出会うことで、変わっていく紗菜の物語。
episode7.「アイスアメリカーノ」
ー今さらこっちがいいなんて言われても遅いんだよ?
それからクリニックに通うようになり、
顔の施術だけではなく美肌効果のある点滴や内服薬、サプリメント、
クリニックオリジナルのスキンケアを買うようになった。
ーきれいになるために、自分に何かしてあげることがこんなに楽しいなんて。
「あれ、なんか今日すごく肌きれいじゃない?ファンデ変えた?」
そう咄嗟に言われ、シロップを片手に顔を上げる。
友達の結婚式帰りのリナと、代官山にあるパンケーキ屋さんで待ち合わせ、
たまには甘いものをと、ホイップクリームたっぷりのケーキにフルーツもトッピングした。
「実は、美容皮膚科に通いはじめたの。リナがシミ取りたいって言ってたから、わたしも何かしたくて。」
「そうなの?だからそんなにモチ肌なのね。何やってるの?」
「IPLとビタミンCのイオン導入とパックのコースを買ったからそれに通っているのと、今度ここのほくろも取る予定だよ。」
美容とは不思議なもので、やればやるほど、もっときれいになりたいという欲がどんどん出てくるのだ。
リナとこんなに美容の話題で盛り上がったのは初めてかもしれない。
なんだかそれも嬉しかった。
テーブルに表向きに置いていた携帯の画面が明るくなり、メッセージが2件通知される。
『フォローありがとうございます。ジュンです。
この前の雨の日にホットワイン一緒に飲んでくれた方ですよね?^^ーjun』
『紗菜、勝手なのはわかってるけど・・・会いたい。ー佑樹』
「!!」
「なに、どうしたの?」
声にならない心の叫びが、リナにばれてしまう。
「ごめん一通だけメール返させて。そのあとで聞いて。」
「なになに面白い話?ていうかこれ、かなりフォトジェニックだったのに
写真撮る前に食べちゃったね。」
リナに相槌を打ちながら右手にスマホを持ち、左手でアイスアメリカーノのグラスを回して、氷を溶かす。
これはこれで濃くて刺激があって、美味しいけれど氷が溶けかかり、
ちょうどいい具合に薄まったほうがやっぱり好きだ。
佑樹も新しい女よりも、やっぱりわたしのほうがよかったと気づいたんだろうか。
to be continued…