美容小説「Language of flowers」1
Language of flowers
『肌がきれいだったら、人生は変わっていただろうか?』
美容皮膚科に出会うことで、変わっていく紗菜の物語。
epsode1.「別れは突然に」
ー平日の昼下がり、お気に入りのカフェ。そこで起こった出来事とは。
平日の昼間に一人でカフェにいるのが好き。
どこへ行っても土日みたいに混んでいなくて、電車も空いている。
カフェの席探しに困る事もない。
自動車ディーラーの仕事を辞めない理由のひとつは、この平日休みに慣れて
しまったからかもしれない。
渋谷と原宿の間にある去年できたこのホテルのラウンジは、
恐らくアクセスがよくないのと、出来たばかりなため平日は閑散としている。
ノマドワーカーがちらほら居るくらいだ。
テラス席が気持ちよく爽やかで最高な季節。
この後はスパでも行って、最高な休日を始める予定だった。
しかし、たった今、恋人の佑樹に振られた。
しかも、たった一言。メールで。
ーありえない。
2人の間に温度差が出来ていたことはわかっていたが、
34歳の年上の男が直接会わず恋人を振るという事実が信じられなくて、まだ事態を受け入れらなかった。
だけど…来月の30歳の誕生日は一人で過ごすことは確定した。
東京オリンピックを未来の旦那さんと一緒に観に行くという目標を立てた去年の冬、
いろいろ逆算して考えると今年中にプロポーズされていないと間に合わない。
だけど、もう今年も半分が過ぎ、7月だ。
ー恋愛をするために、また出会うところから始めるのか・・・。
想像するだけで眩暈がする。
寿退社をする予定のはずが、このままだとお局になりかねない。
先月、最後の独身仲間だった同期も結婚してしまった。
誰かと話しがしたくて、携帯の画面をスクロールする。こういうとき、
頼りになるのはなぜか昔からラ行の女子だ。レイカも、理沙も、るいもフットワークが軽い。
数秒迷って、リナに電話をかける。
リナサナコンビだと言われ、クラスで目立っていたわたしたちは、
見た目のタイプこそ違ったが仲が良く、短大の2年間常に一緒にいた。
リナは、近頃しょっちゅう海外旅行に行っているが、
フリーでアートディレクションの仕事をしており、時間に自由がきく。
ーお願いお願い、出てー!
祈りのような念が通じたのか、10秒で出てくれ、「10分で行く。」と言ってくれた。
ひと息ついて辺りを見渡す。気温は29℃まで上がっていた。
テラス席にはわたしと欧米人の男性一人しかいない。
ー暑っ。
買ったばかりの花柄のスカートの裏地が脚に張り付く不快感で、ようやくその暑さに気付く。
アイスアメリカーノの氷が溶けて、いい感じに薄まっていた。
時間が経つと好みの味になるなんて、なんてずるい飲み物なんだろう。
to be continued…